◎ 入学辞退者の大学前納金返還訴訟



”画期的判決 ”に大学困惑  「消費者契約法」の適用で!



◆ 平成15年7月16日 京都地裁判決


【 判 決 骨 子 】
(1)在学契約にも、「消費者契約法」を適用

(2)前納金を返還しないという入学試験要綱の不返還特約は無効

(3)受けていない授業料や、利用していない施設利用料(施設整備費)の返還
   を請求できる

(4)『入学金を大学生になる資格を得るための対価』とし、学生の地位を取得
   する4月1日より前に入学辞退の意思表示をした場合は、入学金の返還
   認められる


◆ 従来の見解は?

● 文科省(平成14年5月) 全国の私大に通知
「入学金を除く授業料や施設利用料などの前納金を3月下旬の国公立大学合格発表後に納付させるか、入学辞退者の返還要請に応じるよう」求める通知



 ◆ 消費者契約法 (平成13年4月1日施行)
 
  • もともとは、悪質な訪問販売などから消費者を守るためにできた法律で、事業者
     と消費者の契約内容が不適切であれば、契約の取消し等ができるようになった。


     @ 消費者が虚偽の説明を受けて結んだ契約の取消権
     A 契約が解除された際に、事業者が発生した損害以上の違約金を請求できない

      ※ 今回の訴訟では、原告側が 「大学と受験生の関係は、事業者と消費者の
        関係にあたる」
    として前納金の返還を請求する根拠とした




  • ◆ 平成15年9月19日 大阪地裁判決

    ◎ 今回の原告は、いずれも『消費者契約法』施行以前の元受験生

    【 判 決 骨 子 】
    (1)入学金を返還する義務はない。
          入学金は「学生としての地位を得る一種の権利金」
    (2)授業料などは返還すべきだが、『返還しない』という特約条項が公序良俗
       に反し無効とはいえない。
          授業料は、本来的には返還すべきだが、『特約』は有効



    ◆ 平成15年10月6日 大阪地裁判決

    ◎ 今回の原告は、いずれも『消費者契約法』施行後の元受験生

    【 判 決 骨 子 】 入学金:京都地裁と逆判断
    (1)入学金を返還する義務はない。
          入学金は「学生としての地位取得のための対価」
               「入学できる地位を得る対価」としての安心料
    (2)授業料を『返還しない』という募集要項の『特約』は無効
          授業料の返還を命じ、入学金の返還は認めず



    ◆ 平成15年10月9日 大阪地裁判決

    ◎ 今回の原告は、いずれも『消費者契約法』施行以前の元受験生

    【 判 決 骨 子 】 
    (1)入学金の返還請求はできない。
          入学金
       「納付することにより、学生としての地位を取得する目的が達成された」
    (2)授業料を『返還しない』という募集要項の『特約』は有効
       「民法の公序良俗違反に当たらない」と判断
      授業料については、大学の手続き費用などを控除した額の返還を請求できる    



    ★ 平成15年 4つの < 訴訟 > の判断 (バラバラ)
     7月16日
    京都地裁
    9月19日
    大阪地裁
    10月6日
    大阪地裁
    10月9日
    大阪地裁
    受験の時期
    消費者契約法
    の前後
    契約法
    以後
    契約法
    以前
    契約法
    以後
    契約法
    以前
    入学金×××
    授業料など×
    特 約無効有効無効有効
    〇は返還、 △は一部返還、 ×は返還せず



    ◎ 入学金返還は 2審も認めず(高裁判断 全国初)
    「消費者契約法」施行後の受験 大阪高裁控訴審判決「授業料は返還」
    入学金を除く前納金の返還を命じる司法判断がほぼ定着
    (平成16年5月20日 日経新聞)

    ◎ 「授業料不返還特約は無効」(消費者契約法施行前で初)
    「授業料不返還特約は公序良俗に反する」大学側の常識認めず
    大阪高裁控訴審判決 2大学に「授業料の返還」命令
    (平成16年9月11日 日経新聞)

    ◎「大学授業料返還訴訟」 元受験生逆転勝訴「契約法」施行前
    大阪高裁控訴審判決 (平成16年10月2日 日経新聞)


    ◎ 最高裁が初判断 消費者契約法の施行以降 大学入学辞退 新年度前なら前納授業料を返還
    (平成18年11月28日 日経新聞)




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    素朴な疑問に理解を示した京都地裁判決から消費者契約法の適用に至りました。
    一方、私大にとっては、「長年の慣習」「重要な収入源」なので、経営に大きく影響してきます。




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